6月3日のタイガース対マリーンズ戦(甲子園)。タイガースは4番・ゴメスの2ランで幸先良く2点を先制すると、その後も打線がつながり6回までに8得点。初回のピンチを凌いだ先発・藤浪は2回以降立ち直り6回までに10個の三振を奪って無失点、完全に楽勝ムードで試合は終盤に突入した。
しかし7回、ライト・伊藤隼のまずい守備もあって先頭打者の今江にスリーベースを打たれる。これが40分続く悪夢の始まりだった。1死後、上本のエラーで1点を返されると藤浪が突然乱調に陥り、2死まではこぎつけたが鈴木にタイムリーを打たれたところで降板。この時点でロッテのスコアボードには4点が刻まれ、塁上には2人の走者が残っていた。代わってマウンドに上がった高宮が角中にタイムリーを浴びると2走・清田が生還。得点した走者の責任投手は打たれた投手ではなく出塁させた投手となるから、これは藤浪の失点となる。ただし自責点にはならない。上本のエラーが無ければ3アウトでチェンジになっていたからだ。スコアの付け方で誰もが苦しむのがこの自責点。エラーがあれば自責点にならないと覚える人が多いがそれは違う。上本のエラーで今江が生還した1点目の場面も前進守備の上本が弾いたのを見てからスタートを切っているため非自責点になっているが、もし上本が定位置を守り今江がゴロゴーでホームに走っていれば、失策は打者の出塁に対してのもので今江の生還は自責点になる。
アウトの機会が3度あった後の失点は自責点にならない、というのが原則だがリリーフした投手はこの恩恵を受けられない。つまり上本のエラーが無ければチェンジだったという考え方は藤浪の自責点にだけ適用される。藤浪、高宮が責任を負う走者が塁上にいる場面でこの回3人目の松田がスリーランを浴び同点にされるが、自責点は藤浪が0で高宮と松田が共に1。トータルすればこの試合の成績は藤浪が失点6自責点0、高宮が失点1自責点1、松田も失点1自責点1となる。その結果、試合前に2.10だった藤浪の防御率は1.92となった。
文:小中翔太