タイガースのベンチには今季、狩野、関本、新井良と右の代打陣が3枚スタンバイしている。その中で最近存在感が増しているのが狩野だ。
7月12日のジャイアンツ戦では同点の8回、1死満塁で打席に立つと2ストライクと追い込まれながらも、しぶとくセンター前に落ちる勝ち越しのタイムリーを放ち首位攻防戦で3連敗の危機に瀕していたチームを救った。春先はチャンスメイクをする場面での起用が多かったが、関本が左脇腹痛で離脱後は代打の切り札として終盤のチャンスで打席に立つことが多くなっている。
「もちろん決めたい、還したいとは思いますけど、代打で行く時は出ること、つなぐことが1番なので。そこは変わらないですね」
代打成績は、ここまで31打数9安打の打率.290。1打席で結果が求められる難しい役どころで3割近い打率を残し、4つの四死球も合わせれば出塁率は.361を誇る。打撃練習では引っ張りが目立つわけでもなく右打ちに徹するわけでもなく、コースに合わせて右へ左へと打ち分ける。何より、代打で名前がコールされた後の盛り上がりはファンからの期待と信頼の証だ。
「やっぱりやる気出ますから。勝ちたいと思いますし、喜ばせたいという気持ちになりますよ」
割れんばかりの歓声はネクストバッターズサークルから打席に向かう十数歩の間にしっかりと届いている。
文:小中 翔太