ファイターズのドラフト1位ルーキー・有原が、プロ入り最長の6回2/3を105球、2安打5奪三振の好投で3勝目を挙げた。
「歴史あるジャイアンツにどんな投球が出来るか。真っ向勝負してちゃんとした姿を見せられるか。有原にとって意味のある登板になる。必死に泥臭くやってほしい」。試合前栗山監督は有原に対して話した。その有原は過去3戦全てで、立ち上がりに失点を喫している。その原因は変化球に頼りすぎてしまい攻めの投球が出来ていなかった事が挙げられる。
だからこそ、今日の有原は腕を強く振った。課題の初回。有原は150キロを超えるストレートを軸に、危なげなく3者凡退に抑えた。球場を沸かせる程の見事なパワーピッチングで一気にリズムに乗った黄金ルーキーは5回2死まで一人の走者も許さない完全投球を披露。しかし、プロ入り最長になる7回に先頭・亀井に右越え2塁打、坂本に四球などで1死、2,3塁とされると長野に犠牲フライを許し1点を失って降板した。最後に少し悔いが残る投球になったが、結果的に7回途中1失点なだけに、十分すぎる程の活躍になった。
そして何より、この試合で1番印象に強く残ったのはルーキーに何としても白星を付けさせたい指揮官の執念だった。8回に勝ちパターンの鍵谷が1点を失い、なお1死2塁の場面で栗山監督は勝負に出る。ここから、一人一殺を渋る事無く谷元、石井、増井と繋ぎ8回のピンチを凌いだ。1イニングで勝ち継投の投手を4人使うのは当然今季初の出来事。この采配に対して試合後の栗山監督は「勝負に行ける所で勝負しないと、交流戦はワンチャンスで試合がよく動くからね。若者には勝ち星が大きな自信になるので何とか勝たせたかったし、ホームであるけど皆でこの場を凌ぐ気持ちでいたから勝負した」と説明した。
この勝ちへの強い執念はジャイアンツ戦だからこそ生まれる。チームは2013年から実に6連敗中を喫している宿敵相手。さらに過去を振り返ると2009年と栗山監督が指揮を執った2012年の日本シリーズでともにジャイアンツに敗れている悔しい過去がある。「ジャイアンツを取る事ができたらチームの良い栄養剤になる」と常々指揮官は話している。2連敗中と元気もなく栄養不足気味だったチームに今日の勝利は格別大きな栄養を手に入れたに違いない。今後も指揮官の思い切った攻めの采配がチームの躍進にも繋がりそうだ。
文:鈴木将倫