ファイターズの左のエース・吉川が、8月7日のイーグルス戦(札幌ドーム)で今季最多の球数となる、130球の熱投を披露し、1 失点完投勝利で今季8勝目を挙げた。
チーム状況は最悪だった。前カードを振り返ると、首位ホークスとの実力の差を感じる3連戦になった。エースと守護神がともに打ち込まれ、4番の中田翔も大事な3連戦で無安打と沈黙。 気づいたら、首位ホークスとのゲーム差が11.5に広がる、悪夢の3 連敗。「このまま、ズルズルと落ちてしまう雰囲気があった」と指揮官も危惧していた。
しかし、絶望的なチーム状況の時にこそ頼りになるのが、エースだ。この日、吉川は序盤の3回まで無安打投球を披露。「真っすぐをしっかり投げる事が今日のテーマ。2 順目以降も真っすぐの状態が良かったら真っすぐで、いける所までいくつもりでした」と語った通り、ピンチを作ってもストレートを軸にした強気の投球スタイルを崩さずに凡打の山を築いた。
さらに100球を越え始めた7回以降も最速149キロ計測するなどガス欠を起こす事もなかったが、最終回の9 回は「詰めが甘かった、悔しい」と零封締めまで、後アウト一つのところで連打を浴びてしまい、3年ぶりの完封は逃した。 それでも、自身8勝目はチームの連敗を4で止める好投だったのは間違いない。
栗山監督は「3 年前もそうだったけど、力でねじ伏せられる感じが出てきた。常々いっているけどカードの頭を取らないと連勝する事が出来ない。だから大事なカードの頭は吉川に行かせたい」と左のエースを高く評価。 思えば、左腕は2012年に14勝を挙げた時も8月に4勝、9 月には3勝を挙げている。後半戦から尻上がりに調子が良くなったことで、チームも勢いに乗り、リーグMVPを獲得する事ができた。その12年の勢いを越える“自信”を持っている吉川だからこそ、今季も得意な後半戦で白星の積み重ねが大いに期待できる。
首位・ホークスとのゲーム差はまだ大きく離れているが、指揮官が優勝への「キーマン」としている吉川の好投が、これからのファイターズの命運を大きく左右しそうだ。
文・鈴木将倫