2対2のトレードで、ジャイアンツからファイターズに加入した矢野が、6月12日のベイスターズ戦(札幌ドーム)に「6番・DH」で移籍後初先発。入団記者会見の翌日という試合だったが、いきなり3本の2塁打を放ち、6打数3安打2得点の大活躍。出塁した全ての回で得点に繋がり、早速チームに刺激を与える“矢野効果”を見せてくれた。
矢野は初回、2死2,3塁の好機で凡退に終わったが、2打席目の4回に先頭でレフト線への2塁弾を放ち、チャンスメーク。流れに乗って、1死から不振に陥っているレア―ドが2ランを放った。1点リードで迎えた7回は1死から中越え2塁打を放ち、またベテランが好機を演出。これが大野と西川のタイムリーに繋がる。その後、再び同点に追いつかれ延長戦に突入する。7対7で迎えた延長11回、先頭の矢野がまたしても突破口を切り開くレフト線への2塁打で出塁。これが相手に大きなプレッシャーを与えた。代走谷口が3塁まで進んで、最後は西川の打席で暴投から本塁生還。4時間45分の熱戦はあっけないサヨナラ劇になったが、僅か1試合で矢野の存在感を大きく示す価値ある1勝になった。
試合後、矢野はこれまでの出来事を振り返った。「昨日は人生で初めて寝られないぐらい緊張しました。監督から『リラックスしてやってくれ』と言ってくれたのが結果に繋がったと思います」。興奮気味で話すと、続けて「(移籍後)初めての試合を全員でもぎ取る事ができて良かった。飯山さん以外は年下なのに、年下の彼らから声をかけてくれて本当に嬉しかった。それが今日の結果にも繋がった」と新しい仲間にも感謝を込めた。
現在チームは20代中盤の選手が多く、野手のベンチメンバーでは飯山に次ぐ34歳になる矢野。経験が不足している選手が多く、知識が豊富なベテランは今のチームにとっては貴重な存在だ。ましてや規律も厳しい、球界の盟主と言われるジャイアンツに長く活躍していた経験は若手に大きな見本になる。
矢野の活躍に栗山監督は「感動しました。気持ちが前面に出ていて、(矢野)謙次の姿を見て1番大切な事を思い出させてくれる。田中賢や飯山が今まで引っ張ってくれたけどもう一人引っ張る人が出来て良かった」と新たなベテランの加入に目を細めた。早くもチームと北海道の心を掴んだ矢野。勝負強く熱い男がこの先、北の大地を何度も沸かせてくれるだろう。
文:鈴木将倫