若手が育たない。そんなレッテルが貼られた阪神において、5年目を迎えた島本がオープン戦9試合、5回1/3を投げて無失点。文句なしの成績を残し育成出身選手としては球団史上初となる開幕一軍をつかみとった。オフに大きな補強もなく、福原を故障で欠く。それでも中西投手コーチは開幕時の陣容に「若手は怖さ知らないけど思い切ったところで力を出してほしい。打たれることもあるけど抑えれば自信になる。中継ぎに関しては去年よりいいメンバーかな。去年は6月ぐらいまで手探り状態だった」と手応えを感じていた。
ただ島本は開幕一軍メンバーに選ばれた時よりも支配下登録が決まった時の方が嬉しかったという。「これでまたチャンスがもらえると思ったので」言葉の裏には戦力外通告の危機と直面した過去がある。
育成選手の契約は規定により3年まで。その期間内に支配下選手になれなかった場合は自動的に自由契約となる。その後再び同一球団と新たに育成契約を結ぶことは可能だがその例は多くない。島本は勝負の年となる入団3年目の2013年シーズン、オープン戦ながら初めて甲子園のマウンドに上がる。しかし、先頭打者を四球で歩かせると続く打者に被弾。3人目の打者にも四球を与えてしまったところで交代を告げられた。やっとの思いでつかんだ千載一遇のチャンスに1死も奪えず。ウエスタンリーグでは25試合に登板し防御率4.94。支配下登録されることなくシーズンを終え自由契約となった。それでもオフに再び育成選手として阪神と契約。そして、延命されて臨んだ昨季、先発でも中継ぎでも好投しシーズン終了後、念願の2桁背番号を背負うことが決まった。
「ストレートでファールがとれるようになった」と成長を感じていた島本は開幕後も左キラーとしてマウンドに上がる。4打数無安打1三振と完璧に抑えられているDeNAの3番・梶谷は「いい球投げますよね。若くて躍動感あって。やな相手です」と難敵の出現に舌を巻いた。しかし最近は4月25日の広島戦で1/3回を1安打2失点、5月3日の巨人戦では代走の切り札・鈴木に6年ぶりとなる一発を献上。4日の中日戦では失点こそしなかったものの2イニングで3人の走者を背負った。8日に小嶋が1軍登録されることが濃厚で、他にも2軍で榎田、藤原が好成績を残しているだけに広島3連戦は1軍生き残りへの正念場だ。
文:小中翔太