ジャイアンツが混セを抜け出すためには、この人の完全復活が欠かせない。7月8日のスワローズ戦(東京ドーム)で阿部慎之助が、2試合連続となる第6号本塁打を放った。阿部の2試合連続本塁打は、今季初。阿部は今回のホームランを「前の球を中途半端なスイングになってしまったので、しっかりと強いスイングしようと思った。打った瞬間に手ごたえがあったし入ると思った。完璧だったね」と振り返った。試合後、原監督も「「バットもしなり体もしなり、本来のいい形のホームラン」と、復活の兆しをみせた主砲のひと振りを称賛した。
チームが80試合を終えた7月8日時点での阿部の成績は、50試合に出場し打率.245、本塁打6、打点19。これまでの実績と比べてしまうと、どうしても物足りなさを感じてしまう人も多いだろう。だが、これまでを振り返れば阿部を責めることはできない。肉離れや首痛で離脱した時期はあったが、「99%とない」と言われたキャッチャーに復帰を果たすなど、チームのために自分を犠牲にしてきたことは確かだ。
誰よりもチームの勝利を第一に考えるのが阿部の凄さでもある。それを物語るシーンが、7月1日にあった。憧れの存在と語っていた掛布雅之氏の記録を抜く節目となる通算350号本塁打を記録。しかし、この試合チームは大敗、自身も節目の本塁打を放つ前打席では、満塁のチャンスで凡退していた。そのため「区切りの350号を打てたことは良かったが、素直に喜べないホームラン」とコメント。直後のベンチでは、花束を放り投げるシーンもあった。節目の記録を達成しても、自分の不甲斐なさに腹を立ててしまうほど、責任感が強い選手なのだ。
原監督が「阿部には楽な打順で打たせたい」と、7月7日からは打順が6番となった。4番という打順に強いこだわりを持つことはわかっているが、チー状態がなかなか上がらないことを考えると、重圧を少なくする意味でもベストな判断なのかもしれない。
7月10日からは、前半戦の大きなヤマ場といえるタイガース、ベイスターズとの6連戦がスタート。ここで大きく勝ち越せば、混戦から一歩抜け出すことができる。そのカギを握っているのは、阿部のバットだと言っても過言ではないだろう。
文:松野 友克