ホークス・柳田悠岐が 交流戦で本塁打量産態勢に入った

 5月27日のナゴヤドーム。23600人の観客は、とてつもない弾道を目撃した。ホークス・柳田悠岐が8回にドラゴンズの高橋から放った10号ソロは、ナゴヤドームの天井をかすめる特大アーチ。長い滞空時間の間、ナゴヤドームはどよめきに包まれていた。

 

 柳田はその前の打席でも、山井のカーブを捉えてレフト方向への同点本塁打を放っており、自身初の2打席本塁打を記録。さらに、翌28日のスワローズ戦では、小川のストレートをレフトスタンドに運び、交流戦4試合で3本塁打と量産態勢に入った。昨年の10号本塁打は7月3日に記録。1ヶ月以上も早いペースで2ケタに到達している。

 

 27日の試合後、工藤監督が柳田を「怪物だよね」と評したことを受け、28日のお立ち台では「普通の人として見てください」とスタンドを笑わせた。さらに、そのインタビューを聞いた工藤監督は、報道陣に対して「みんな普通の人なんて思ってないでしょ?」と逆質問。「スイングの速さ、ボールを捉える技術を含めて、試合をやる中で一番成長してくれている選手」と、改めて柳田に賛辞を贈った。

 

 交流戦に入る前、柳田に本塁打への意識について話を聞いた。

 

 「去年は、プロで初めての3割を達成できそうになってから打率ばかりに意識がいって、本塁打への意識が薄れていました。そのころに比べれば、今は本塁打への意識は高いです。でも、打席で考えるのは『来た球を強くしばく』ということだけ。練習どおりに打てれば、本塁打にはなります。ただ、練習どおりに打つこと自体が難しいっす」

 

 27日の特大アーチも、5月5日に放った推定145mのサヨナラ弾も「練習どおりのいいスイングができたから」と柳田。ホームの打撃練習では、李大浩とともに最後の組としてゲージに入り、打撃投手が投じる球をフルスイングで「とにかくしばき倒す」。ファンクラブの先行入場が始まる時間帯だけに、スタンドの警備員は打球を警告する笛を吹きっぱなしの状態だ。

 

 大道打撃コーチが「今は柳田のあとの内川、李大浩、松田が揃って調子を上げているから、柳田は気楽に打てている。このままなら、柳田は打率も本塁打数もかなりの数字になるんじゃないかな」と語れば、柳田本人も「後の打者が打ってくれるのは確かに楽ですよ」と、先輩たちの存在の大きさを認める。

 

 柳田は「試合に出続ければ、結果はついてくると思うので、とにかく試合に出続けることだけを考えています」と、具体的な数字については語ろうとしない。このまま143試合に出続けたとき、柳田はとてつもない進化を遂げているかもしれない。

 

文:藤浦一都