ベテラン鶴岡、20年目の正捕手獲りへ

 最近スタメンマスクが急激に増えているタイガース・鶴岡。プロ20年目を迎えたベテランが巧みな読みとリードでチームに貢献している。

 

 ドラフト1位ルーキーの横山がプロ初登板した21日の巨人戦で両軍無得点の4回、先頭の片岡が安打で出塁する。巨人側からすると局面を打開するためには動きたい場面。2ボールからストライクを1球をとりカウントが整ったところで、横山が牽制球を投げるとスタートを切った片岡は2塁タッチアウト。片岡は投手が動き出した瞬間にスタートするピクイチスタートと呼ばれる盗塁を試みており、横山の牽制もそれまでより長くボールを持っていたためどちらもサインであることは明らか。鶴岡は26日の楽天戦でも3回2死から四球で出塁し盗塁を試みた1番・福田を刺している。楽天側からすればそれまでノーヒットで1点ビハインド、盗塁が成功すればワンヒットで同点に追いつけるし失敗しても次の回の攻撃が2番から始まる好打順となる場面。開幕前に超機動力野球を掲げた大久保監督が仕掛けることはほぼ確実で、問題はいつ仕掛けるかだった。3度の牽制をかいくぐった福田は2ストライクからの3球目、これ以上ないほどの好スタートを切ったが岩田も足を地面すれすれにしか上げないほどのクイックで投げており結果は盗塁失敗。巨人戦に続いてベテランの読みが相手ベンチの作戦を上回った瞬間だった。

 

 盗塁察知能力はもちろんだが1割前後の打率でもスタメン起用される最大の理由はリード面にある。岩田が4年ぶりの完封勝利を挙げた26日の楽天戦後、和田監督は「最大限岩田のいいところを引き出していた。内外高低に緩急も使いながら非常にいいものを出してくれた」と鶴岡のリードを絶賛。その中の一例を挙げるなら3点リードの7回に1死1、2塁で嶋を打席に迎えた場面。初球のセーフティ気味のバントがファールとなると、2球目はインコースぎりぎりいっぱいの厳しいコースにストレートが決まる。バントを決めるのは難しく、打ったとしても詰まった内野ゴロにしかならない2重の意味がある完璧な1球。普通はこれだけいい球が決まると決め球として使いたくなるところだが、1球ボールを挟んでの4球目、嶋はやや浮き気味に入って来た甘めの緩い変化球に全く手が出ずに見逃し三振。セオリーを逆手に取り楽天正捕手の裏をかく見事な配球だった。山田バッテリーコーチも「試合の中での打者の反応をよく見てる。昨日の嶋のスライダーで見逃し三振なんかしてやったりだよね」と勝因のひとつに挙げた。

 

 今季の開幕は2軍スタートで、当初は1軍でも2軍で組んだ若手投手が先発する時限定の捕手として見られていた。「試合前にブルペンで話すことは特に無いですよ。持ってるもの出せたら抑えられると思いますし、思いっきり投げてもらうだけ」とあくまで1歩下がった女房役を貫くが鶴岡の存在感は日増しに高まっている。