今、竜党の期待を一身に集める福田永将が、チームに今季初勝利をもたらした。タイガースとの開幕カード3戦目に代打で今季初安打を3ランで飾り、この試合は右手親指骨折で登録抹消となった森野将彦に代わって「5番・一塁」で出場。オープン戦で29打数19安打の打率.483、4本塁打、13打点とノリに乗っている男は、シーズン開幕後の自身初スタメン試合でも、いきなり第1打席で結果を出してみせる。
2回裏、巨人先発・杉内のストレートを捉えると、「バットの少し先だったけど、気持ちで押し込みました」と、打球は滞空時間の長い大きな放物線を描いてレフトスタンドに着弾。今季放った2本目の本塁打は、まさにホームランアーチストらしい一発だった。さらに1対0で迎えた6回裏、無死1、2塁の好機ではライト前に鋭く弾き返すタイムリー。そして同点に追いつかれて迎えた8回、チームに勝利を飛び込んだのも福田のバット。速球投手のマシソンが投じた149キロの直球に振り負けることなく、あわや1試合2発となるレフトフェンス直撃の2塁打でチャンスを広げ、その後、小笠原の決勝タイムリーへと繋がった。プロ入り初の猛打賞、お立ち台も人生初という大活躍だった。
福田は、捕手としてプロの世界に足を踏み入れた。しかし捕手としての守備力に不合格の烙印を押され、プロの世界で生き抜く術として残されていたのは打撃だった。「自分はバットで勝負していこうと3年目からそう思ってやっています」。心に決めて磨いてきた武器は、いまやチームの中でトップクラスの長打力といっても過言ではない。谷繁監督兼選手も「彼はオープン戦から好調を維持して自分の間合いができている。いつグラウンドに出してもいいという状態のなか、森野がああいう怪我で出られなくなったのでもっともっと頑張ってほしい」とその力を認め期待を寄せている。森野の離脱により左の先発投手の対策としてスタメン起用を考えていたが「(右投手の大竹寛に対して)福田の明日のスタメン?今から考えます」と嬉しい方向転換を示唆するほどだ。
念願のレギュラーの座も見えてきたところだが、「与えられたところで一生懸命やるだけだと思っています」と本人に慢心は一切ない。それでも球界を代表する左腕から放った一発には「自信になります」と手応えを感じた。今季初勝利で一歩目を踏み出したドラゴンズ。2015年シーズンのカギは、福田が握っている。
文:高橋 健二