昨年のドラフトで、廖健富は高卒初のドラフト1位となった。それだけでなく、シーズンの半分も経たないうちに、驚異的な成績を残し、また監督の洪一中からも、前半戦のLamigoモンキーズ優勝の立役者だと評している。
取材/黄雅碧 写真/戴嗣松 翻訳/黄意婷
前半戦の優勝決定の試合、勝差が16.5もある中信兄弟との対戦だったが、Lamigoモンキーズはまさかの苦戦。7回まで0対0の接戦だったが、8回裏にモンキーズの打線が目覚めた。2死1.2塁の際、スリーベースヒットで勝負を決め、最優秀選手に輝いた。
適応能力が高く、一軍のスタメンへ
廖健富は前半戦にタイムリー安打を重ねた。4月3日に、2本のホームランで相手チームを追いかけ、4月20日、11回裏のサヨナラ、5月27日に、再び1試合2本塁打を放った。その試合、1本目のホームランで1点を返し試合を同点にし、2本目のグランドスラムで相手チームを突き放した。このような驚異的な打撃成績は、どう見ても19歳の少年には見えない。
国際試合の経験がまだ少ない廖健富は、2016年のBFA U-18アジア選手権大会にのみ出場したことがある。試合中のプレッシャーをまったく恐れないという強いメンタルに関して「自分には、いつものように打てばいいと思っているんです」と話した。緊張感のある場面では、自分との対話で落ち着くことができるそうだ。もちろんプレッシャーを感じることもあるが、一度でもうまくいけば、その後もうまくいくようになると思っているそうだ。
「タイムリーヒットをたくさん打ってくれましたね。」廖健富の優れたパフォーマンスに、洪一中監督はとても満足しているようだ。四番の王柏融がスランプに陥った時も、廖健富が打線をカバーして、ルーキーでありながら、先輩たちを支えている。他の選手よりも早く一軍のスタメンになったことに対して、廖健富はもともとの目標は今年中の一軍昇格だったが、予想より早く目標を達成しただけだと思っている。
この結果について、廖健富は「適応能力」はとても大切だと考えている。高校へ進学する際、家を離れることにしたため、自立するようになったそうだ。高校時代も優れた成績を残した。今の成績について、監督やコーチ、先輩の助言に感謝している。「試合における状況について、すぐ対策を教えてくれるおかげで、僕が速やかに対応できるようになりました。」
一回に10点を得点され、守備面にはまだ課題がある
攻撃面では洪一中監督によく褒められているが、守備面では、やはり捕手である廖健富にとって、勉強することがたくさんあるのだ。捕手出身の監督が廖健富に守備を教える光景はしばしば見られる。「監督はワンバウンドを止めることを一番重要視しています。試合中、失敗することもありますが、ミスを気にせず試合に集中して、また練習すればいいと言ってくれました。」試合中のシチュエーションはさまざまであるため、自分には、守備が課題だと思っている。
たとえば、4月6日の富邦ガーディアンズの試合、キャッチャーとしてピッチャーのダウンズ(Darin Burton Downs)とバッテリーだったが、4回表に猛攻撃に遭った。14人の打者が8ヒット、3フォアボールで10失点。5回になると、キャッチャーが劉時豪に交代することになった。「正直、自分にはどうしたらいいかわかりませんでした。僕のやり方でなんとかしてみましたが、無理でした。ですからコーチからも助言をいただいて、そんなミスを直すように言われました。」また、疲労も溜まってきたため、自信もなくなったと話した。「試合中、何かうまくできなければ、自分のことさえ迷うようになりました。」そんな彼を見守っている監督とコーチは、時には捕手、時には指名打者として試合に出すようにしている。体力の使い方を管理してもらえると、廖健富の調子もよくなってきたそうだ。「コ―チたちとの相談によって、調整することができたんです。」
「四割男」を目指す強打青年
守備にも体力にも課題が残っているようだが、自慢の打撃は好調だ。前半戦の57試合計244打数の中、88安打、8本塁打、打率はなんと.421だった。彼は「四割男」を目指しているのだ。打撃ランキングからみると、安打数も、打率も、打点も1位となっている。そのことについて、同じコーチたちの助言に感謝しているそうだ。「相手チームの投手を観察してきたので、攻撃の戦略をいろいろ教えてくれました。たとえば、コントロールがいい投手と対戦するとき、積極的にバットを出すこと。」
打席に立っているときも、キャッチャーにとって大切なことだ。たとえば、廖健富は相手チームの配球を見て、自分の配球の参考にする。攻撃と守備の繰り返しの中、自分の野球への考え方も成長している。「もし、僕が配球をしていたら、相手の打者を惑わすことができるのかについて、時々考えているんです。」と話す。実は高校一年生の時、U-18代表候補に一度入ったが、結局代表チームには入れなかった。それで、スランプに陥り、「思う存分にプレーできない時期もありましたが、二年生の後半になって、いつもの調子に戻れました。」そんな落ち込んでいる時期があったため、廖健富は調子が悪い時、どうやって調整できるか、またはどのような考え方で乗り越えられるか、ようやく理解できるようになったそうだ。
故郷を離れ「ベテラン」へ。19歳には見えない大人しさ
試合の成績が優れているだけでなく、同世代の人よりもおとなしいため、最近、廖健富はファンに「ベテラン」と呼ばれている。「僕がこんな性格だからでしょうね。周りのみんなにも、落ち着いている人だと思われています。」もちろん、やんちゃな時期もあったが高校に進学後、おとなしくなったそうだ。
高校の時、故郷の嘉義を離れ、高雄の高苑工商へ進学した。「一人暮らしによって、自立するようになりましたね。何でも自分でやらなければならないので、たくさんの経験ができました。」高苑工商は高校屈指の野球名門校だ。監督やコーチにも厳しく管理されてきたことも、「ベテラン」になった理由の一つだと思っている。
高校を卒業しプロ野球に入り、廖健富は体も心も成長した。技術面ではオフシーズンのキャンプなどで腕を磨き、心理面では試合によって経験を重ねる。強くなるために頑張ってきた彼は、家族からの声援をずっと感謝しているそうだ。
野球を始めてから、高校になっても、廖健富の家族はずっと応援している。高校時代の試合はどこで行われても、家族は必ず見に来てくれたそうだ。プロ入りの後、両親は仕事で忙しくて全部の試合が見られないが、「僕も社会人だから、もう親は心配しないでしょう。」と、いつもの落ち着く態度でコメントした。
プロ入りの前は話題の選手だったが、今でもたくさんの注目を浴びている廖健富は、注目されていることに感謝していると言っている。実力を蓄え、いい成績を見せることで、家族やファンに恩返ししたいと思っている。高卒でドラフト1位の一人目として、廖健富はきっと後輩の模範になると期待されている。
廖健富Profile
生年月日:1998.09.28(19歲)
身長/体重:178cm/85kg
守備/投打:捕手/右投げ左打ち
経歴:Lamigo Monkeys(2017~)