【CPBL情報】「チームの一員だと実感した」陳俊秀。打率7割が最高の誕生日プレゼント

 

 

 

 

 

 

陳俊秀は2017年の台湾シリーズ4試合で、打率.714、7打席連続安打という驚異的な成績を残した。11月1日生まれの彼は、これが最高の誕生日プレゼントとなった。

取材/李艾純 写真/戴嗣松.羅紹文 翻訳/黄意婷

 

陳俊秀Profile

生年月日:1988.11.01(29歳)

身長/体重:183cm/97kg

守備/投打:内野手/右投げ右打ち

経歴:クリーブランド・インディアンス(2008~2013)→独立リーグWichita Wingnuts(2014)→Lamigo Monkeys(2014年7月~)

 成績

「嬉しかった」以外、その瞬間の気持ちを表す言葉はなかった。Lamigoモンキーズの陳俊秀は、2017年台湾シリーズのMVPに輝いた。少しシャイな陳俊秀は、優勝の嬉しさでペラペラ話すことはなく、感想を聞かれても「嬉しい」という言葉だけを繰り返していた。この短い言葉には、たくさんの思いがこもっているからだ。a

 台湾シリーズでは過去2大会実力を発揮できずにいたが、今回はキーマンと予想された

  台湾シリーズが始まる前に、ベテランの捕手・黄浩然は、すでに陳俊秀がキーマンになると予測してこう言った。「俊秀はシーズン後半に打撃が不調で長打率もやや落ちたが、台湾シリーズでいつもの調子に戻れるかどうかが、優勝につながってくると思います。」これまで、Lamigoモンキーズは二度台湾シリーズに進出して優勝したが、陳俊秀の心には無念の思いがあった。チームの中心選手として、彼はこれまでの台湾シリーズで実力が発揮できなかったからだ。

 2014年、陳俊秀がアメリカから帰国した。その年の中間ドラフトで3チームに指名された結果、第一指名としてLamigoと1,630万台湾ドルの複数年契約を結んで入団した。気持ちが焦って慣れないこともあったため、最初のシーズンは不調で、打率が.247にとどまりホームランも2本だった。台湾シリーズでも14打数で僅か1安打、打率は.077だった。初戦からスターティングメンバーとして戦っていた彼は、優勝が決まった5戦目はスタメンではなくベンチとなり、チームメイトの応援しかできなかった。

 しかし翌年は、調子を整えて本来の実力を見せた。公式戦では打率.335、 ホームラン25本、盗塁11という全能的な成績を残した。しかし、台湾シリーズで再び苦境に陥った。公式戦では中心選手だったが、打順がどんどん下がって7番打者になり、打率は.250、打点もわずか1打点のみだった。チームメイトの林智勝、王柏融、王溢正は注目を浴びたのに対して、陳俊秀は黙々と左足の痛みを我慢していた。「僕の信念は、優勝にかかっているんだ。怪我をしても、優勝のために頑張ってきたんだ!」シャンパンをかけられた時、このように心境を語った。

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 試合前に落ち着くことができ、今年生まれ変わった

  次のシーズンがまたやってきた。2016年のLamigoは戦力層の入れ替わりで最下位になったが、今シーズンに入ると、首位をキープしたまま、台湾シリーズの挑戦者を待ち受けていた。公式戦が終了した時、陳俊秀はやや不安だった。一ヶ月もホームランが出ず、最後の19打数でヒットは4本だった。このままだと台湾シリーズではうまくいかないと自分を疑っていたそうだ。それで、ずっと「極動」(できるだけ動く)だった陳俊秀は、「極靜」(できるだけ落ち着く)の世界に答えを求めた。「この前は2回もうまくいかなかったので、しっかり落ち着いて、その原因を探り出そうとしていました。毎日寝る前に、試合のことや相手の投手にどうやって向き合うかよく考えて、今度こそチャンスを掴んで戦おうと思っています。」

 それだけではなく、コーチに「思いっきり打て!」と励まされたおかげで、今年の台湾シリーズではいい成績が出せたのだ。台湾シリーズ初試合、初打席では三振を喫したが、3打席目にヒットを放ち、次の試合でもライトへのタイムリーヒットでチームを勝利へ導いた。台湾シリーズの中で一番印象深いヒットはと言うと、陳俊秀は3戦目の洪宸宇投手との初めての対決だと思っているそうだ。それは、7打席連続安打、連続9出塁の始まりだったからだ。台湾シリーズで7打席連続安打という成績はCPBL史上最高記録で、4戦目までに合計10安打もタイ記録だった。.714の打率は、次の打者の郭厳文に「妖怪かよ!」と突っ込まれた。優勝が決まった後、報道陣に囲まれたのはもちろん陳俊秀だった。「別の方法で戦っていたのではなく、台湾シリーズでは一試合一試合、自分の最高のパフォーマンスを見せるだけです。初戦の調子がよかったので、その感覚を覚え次の試合に向き合うように頑張りました。今年は特に嬉しかった!昔は2度もチャンスを逃してしまいましたが、今回はやっと自分がチームの一員だと実感しました。」

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 青いリボンが滝のように降ってきた瞬間。涙が出そうだった

 最終戦の9回裏、一塁を守っている陳俊秀は、27人目のアウトを待っていた。ファーストミットをはめたまま、外野席へ向かって拍手をし、「もっと応援してくれ!もっと力をくれ!」と、ファンたちへ声をかけていたようだった。相手チームの最終打席、クローザー・陳禹勳の力投で優勝が決まった。その瞬間、ファンたちが投げた青いリボンはまるで滝のように降ってきた。頑張った甲斐があったと思い、陳俊秀も胸がいっぱいで涙が出そうだった。「球団、コーチたちに一番感謝しています。素晴らしい環境を作ってくれたおかげで、我々もここまで頑張れたのです。次に、チームメイトたちに感謝します。スプリングキャンプでいろいろ大変だったが、目標の優勝を勝ち取ることができ、本当によかったです。」スプリングキャンプの後は、大変かどうか言わなかったが、公式戦の120試合、台湾シリーズの計4回戦、毎回の打席も、守備も、汗も、同じことのためにあった。ビールを見て、チームメイトにかけるかどうか迷ったが、結局たくさんかけられて、陳俊秀の29歳の誕生日は、忘れられない一日になった。

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