ここぞの場面で光る長打力、顔で取る四球により高い数値を維持する出塁率。福留は打席での存在感もさることながら、打撃の調子が上がらない時期でもライトの守備で何度もチームを救い、過去2年間もスタメンに抜擢された若手がミスを犯す度に福留との守備力の差が浮き彫りになった。
全盛期に比べれば脚力に衰えがあることは否めないが「その分をスタートとポジショニングでカバーしとる」と話すのは山脇外野守備走塁コーチ。「福留は『メッセンジャーが追い込んでるから次外角やぞ。ライン際締めとこか』とベンチから手で合図を送ると『了解』と言わんばかりに右手を挙げる。これを緒方に同じことをしても頭の上にハテナマークが浮かんどる」ポジショニングについて柴田は「難しいですよね。こっちかなぁと思って寄ったら逆だったりするんです」若手では理解に苦しみ、中堅が試行錯誤を繰り返す。外野のファインプレーと言えば派手なダイビングキャッチばかりが注目されがちだが、ファインプレーに見せないのが本当のファインプレーだ。
5月6日の中日戦では2点ビハインドの7回、もう1点もやれない場面で先頭打者の出塁を許し打席に谷繁を迎えると浅めの守備位置をとる。1死1、3塁で大島を迎えると右中間寄りに、2死1、3塁となり荒木が打席に入ると今度は逆に定位置よりもやや右前に守備位置を変えた。データと経験値があるからこそのプロの技。入団会見時に外野守備について聞かれると「ピッチャーの力量とバッターの力量を見ながら」と話していたがその通りの有言実行でチームの勝利に貢献している。
文:小中翔太