【CPBL情報】努力で勝負を決める王勝偉。進化した打撃

 

 

 

 

 

 

王勝偉といえば、守備が優れていることがすぐ思い浮かぶだろう。しかし、今シーズン最初のホームランバッターでもあり、長打率も5割を超えている。もちろん、守備には安定感があり、遊撃手のゴールデングラブを8度も受賞している。これはCPBLの最多記録でもある。今シーズンに入って、守備位置を転向することに挑戦し、「失敗じゃなくて、楽しむべきことだと思います。次の成功へのきっかけとして、自分のことを見直そうと思っています」と語っている。

取材/黄雅碧  写真/戴嗣松 翻訳/黄意婷

 

王勝偉Profile

生年月日:1984.04.01(34歳)

身長/体重:180cm/73kg

守備/投打:内野手/右投げ右打ち

経歴:兄弟エレファンツ(2008~2013)→中信ブラザーズ(2014~)

 昨シーズンの本塁打はわずか2本で、長打率.359。生涯長打率.364にもかかわらず、王勝偉の今シーズンの初ヒットはとても印象的だ。開幕戦の2回表、最初の打席を迎えた王勝偉はツーランホームランを放って、今シーズン最初のホームランで強い印象を残した。

 長打力は例年よりも強く、2本目のホームランは7試合目に飛び出し、二塁打と本塁打の数は安打数の半分弱を占め、5割の長打率は努力の成果を見せたのだ。

体力と技術を合わせ 強いインパクトを作る

 昨シーズンが終わったあと、王勝偉は2週間ぐらいの休暇をとり練習を再開した。最初は体力をつける練習で、一ヶ月後、技術面の練習に入ったそうだ。「体力を上げることで、その後の練習で怪我をしなくなる。また、反射神経が鋭くなるため、新しい技術を覚えるにもいいと思います。」

 今まで体力を鍛えることを重要視してきたが、今シーズンに入りアメリカから迎えた打撃コーチであるプレスリー(Jim Presley)の「インパクトを前にする」という助言で、打撃の技術面が成長し、その成果が長打率の上昇で見られた。しかし、インパクトの習慣を変えることは、簡単ではない。ビデオを何度も見て、コーチのアドバイスを何度も聞いて、スプリングキャンプで何度も練習した結果だ。「スプリングキャンプで、インパクトを変えながら練習してきたんです。インパクトを変えたことでストレートへの対応は少し楽になりましたが、変化球への対応にはもっと練習する必要があると思いますね。練習を重ねて体の本能で反応するようにと、コーチに言われました。」

 インパクトの位置を変えたことで、打撃フォームも話題になった。構えているときの姿が違うと言う人もいれば、オープンスタンスに近いと言う人もいる。しかし、本人はあまり違和感を感じていないようだ。「みんなが言った通りかもしれませんが、足が構える位置によってオープンスタンスに見えたでしょう。でも、ボールが来た瞬間に足も違う位置を踏むので、本当にオープンスタンスになったかどうかわかりませんね」

 フォームより、王勝偉がいちばん大事にしたのは打撃の効率を上げることだそうだ。「ボールがバットに当ったあとのことが大事なんです。スイングスピードを上げることに気をつけながら、練習したんです」と説明した。スイングスピードが速ければ速いほど、ボールを打つことが簡単になるため、インパクトの場所を変えることによって、打撃の効率を上げるそうだ。

 また、今シーズンの最初17本の安打を分析してみると、なんと15本が球場のレフトに集中し、センターとライトには1本ずつだけだった。それもインパクトが変わったことと、相手チームの投手がよく内角球を投げることに関わると言っている。しかし、最近は外角球もしばしば投げてくるため、王勝偉は、「広角打者を目指していますね。体がもっと速く動けば、内角も外角も違うスイングで対応できると思います」と目標をつけた。

守備位置が転向し 楽しい挑戦にする

 打撃だけでなく、守備位置も変わりました。過去に8度ショートのゴールデングラブを獲得している王勝偉だが、今シーズンはセカンドにコンバートし、守備の需要に応じてサードを守ったこともある。守備をもっと上達するために、2017年の年末に、榊原良行コーチの特訓に参加し、今年の始めにはチームのアメリカのスプリングキャンプで、元ブラザーズのショート・ゲレーロ(Sandy Guerrero)の指導を受けた。違う国のトレーニングを受けたが、矛盾しているところはないと言っている。「日本の野球もアメリカから学び、日本人のやり方として表現していると、榊原コーチが言いました。なので、ゲレーロが教えてくれたボールの捕り方を見たら、実は榊原コーチが教えてくれたものと似ていると気づきました。」榊原コーチのトレーニングを受けている間、いちばん驚いたのは、もう68歳の榊原コーチは相変わらず動きが速いことだった。「技術面のことを、頭で覚えるより体で覚えて、まるで血液に溶け込んでいるみたいですね。二人のコーチから学んだことを、どうやって体で覚えるのかがポイントだと思います」と、コーチの教えを振り返った。

 また、ブラザーズのコーチ黄泰龍、チームメイトの陳江和もすっとそばにいてくれるそうだ。彼らはそれぞれゴールデングラブのセカンド・サードを3度獲得しており、捕球・送球などについて、互いに守備のコツについて話し合っている。仲間のアドバイスで、セカンドとサードの守備も思ったより早く慣れたそうだ。「スプリングキャンプの最初は、時間をかけて、セカンドの練習をしました。サードの守備については、打者の動きを観察することによって、どんなボールがサードに来るか、だいたいわかってきました。僕は天才じゃない。練習で上達するタイプだから、努力で勝負を決めるしかありませんね。」と笑いながら語った。

 王勝偉は、いつもの積極的な態度で、守備位置の転向に挑戦している。コンバートして、エラーをしても、反省するチャンスにもなると思っているようだ。違う守備位置のことを理解することによって、その重要性もわかるようになるため、視野を広げるチャンスだと言っている。「コンバートを、とても楽しんでいますね。セカンドでの送球はショートの守備にも役に立ちますよ。セカンドの守備を練習しているあいだ、ショートでもこうやって送球できるかもしれないと気づきました。だから、コンバートは、成長させてくれるいい機会だと思います」

塁間で走ることを楽しみ 生涯200盗塁を迎えた

 今年でプロ11年目になった王勝偉は、打擊も守備も新たな挑戦に向き合い、今まで積み上げてきた記録もマイルストーンに近づいた。昨シーズンは1000本安打に達成し、今シーズンも200盗塁へ到達した。今シーズンは盗塁数が少ないが、「2塁打が多すぎたせいだよ!」と冗談を言った。しかし、チャンスがあれば絶対全力で走ると宣言し、「盗塁は僕のいちばん得意なことです。おとなしく一塁にいるのは、実に大変ですね。ベースの間を走ることは、いつも楽しんでいます」

 盗塁のほか、ずっと「夢」を見ていることがある。たとえば、1年間30本塁打、生涯100本塁打など。遠く見えるようだが、夢を諦めることは決してしないと決めている。「ずっと自分を超えたい気持ちが大切です」

 この積極的な考えも、できるだけチームの後輩たちに伝えようとしているようだ。「失敗した時、あまり自分を責めないで、次の試合のために頑張ってほしいですね」試合で後輩がエラーをしてしまった時、王勝偉はいつもそばにいてあげて、解決策を見出すことにしている。後輩にいろいろな解決策をさせながら、そのメリットとデメリットを説明しているそうだ。

 野球は失敗率がとても高いスポーツのため、悪い評価でも受け入れることが大事だと、王勝偉が指摘した。「たとえ小さな成功でも、自分へ拍手しよう。なぜなら、自信は小さな成功で重ねてできたもので、ファインプレーも普通の守備の成功からできたものです」

妻が先生で、本は友達である

 いつもチームのムードメーカーとして、後輩たちの世話をする王勝偉は、落ち込むことはないの?と思うファンもいるだろう。実はプロ入りの最初の時、王勝偉は調子が悪くなったら録画のビデオばかり見ていて、問題点を探り出そうとしていた。それで、十分な睡眠がとれず、練習も試合も調子が悪くなった。そのため、3年前から、読書で落ち着くようにしているそうだ。実際に本を読んでみて、自分は読書が好きだということに気づいて、特に勇気をもたらしてくれる本が好きだそうだ。

 それから、一人しか本音を言わない相手が、王勝偉の「先生」のような奥さんだ。夫婦はあまり試合のことについて話し合っていないが、やはり挫折をしたとき、王勝偉は奥さんの意見を聞く。「違う視点で僕の問題を見てくれているので、ときどき妻のアドバイスですっきりしましたね。」一切の悩みを忘れて、王勝偉はこれからもすべての挑戦に挑み、いつもの情熱で自分を超えていくつもりだ。